表側矯正 Orthodontic
お子さまをもつ保護者の方から、「自分たちの時代の矯正装置はギラギラと目立って嫌だった」という話をよく聞きます。
表側矯正で使用する矯正装置といえば、金属のワイヤーが装着された歯を想像する方がいまでも多いのではないでしょうか。金属製の装置は銀色でギラつきがあって目立つため、見た目を気にする方にとってはハードルが高いものです。
こうした方も心配なく表側矯正を受けられるのが、透明な装置と白いワイヤーです。矯正装置は、歯につけるブラケットとそこに通すワイヤーで構成されています。プラスチックまたはセラミックで作られたブラケットと白いワイヤーを組み合わせることで、歯の色になじみます。また、ワイヤーをブラケットに固定する結紮(けっさつ)線も白いものを使用すれば、口元がより目立たなくなります。
当院では目立たないブラケットを使っており、できる限りすべての症例で白いワイヤーと白い結紮線で対応しています。
プラスチック製マルチブラケット装置
当院の矯正装置のなかで、一番低価格で根強い人気がある矯正装置です。前歯が透明なプラスチックなので目立たないという利点と、ワイヤーを挿入する部分のみが金属になっていることで、しっかりと矯正力がかかるという機能性を合わせもっているブラケット装置です。
経年変化で摩耗や黄ばみが生じやすいという欠点はあります。
当院では、白いワイヤーを使用することによる費用加算はありません。白い結紮線と白いワイヤーでできる限り対応いたします。
セラミック製マルチブラケット装置(クリスタラインブラケット)
セラミックとは陶器の材料です。前歯の差し歯などに使われる自費治療の材料と同じです。この陶材を削り出して作っているため、薄く小型で作ることができます。
プラスチック製のブラケットと比べてみると、セラミック製のブラケットの方が、白さが際立ちます。白いワイヤー入れてみればキレイさは一目瞭然です。これは、ブラケット装置に対する光の透過性の違いが影響しています。そして摩耗や着色などの経年変化が起きないので、治療期間中ずっと白さが変わりません。
矯正治療を決心された方に、できるだけ良いものをご提供できるように、当院では常に良質な装置を使用しています。
あなただけのカスタムメイドデジタル矯正装置(インシグニア)
歯科矯正用治療支援プログラム(インシグニア)は、デジタルでスマイルデザインの効率化と個々にデザインされた矯正装置の精密さの融合を実現させた、3Dデジタル歯科矯正総合システムです。
このシステムは2019年に厚生労働省からの認可を得た、表側矯正装置で唯一のカスタマイズされた矯正装置です。
歯科矯正用治療支援プログラム(インシグニア)ソフトウェアを利用し、矯正医がバーチャル3Dモデル上で目標とする咬合と個々の歯の治療法を立案します。そしてソフトウェア上で各患者さま用にカスタマイズされたブラケット、ワイヤー、プレースメントガイド(ジグ)がCAD/CAMで作製されます。それを患者さまにご提供することで、治療期間の短縮と高い治療効果を上げることができます(2013年JCOで発表された論文では、このシステムを使用することで「治療期間を37%短縮※1」「来院回数が平均7回減少※2」と述べられています。)
従来の表側矯正は、事前に予測模型を作製することは稀でした。歯科矯正用治療支援プログラム(インシグニア)はすべての症例で事前にデジタル予測を行ないますので、患者さまは治療を始める前に最終的な咬合をご自身の目で見て確認することができます。
また、カスタムメイド矯正装置(インシグニア)のデジタルセットアップについては、CTから歯根情報を取り入れることが可能なため、デジタルセットアップの段階で歯根の位置が確認できます(地味に聞こえるかもしれませんが、矯正界では革新的なことでした。歯根の並び方まで事前に予測して、ブラケット装着位置を決めることができるのです)。
もりざわ歯科・矯正歯科では先進的な技術・デジタル機器を導入したことにより「抜群の安全性」「短期間での治療の実現」「圧倒的精度」を手に入れ、デジタル技術を駆使した矯正を取り入れています。
※1 「AJO-Do 論文(2015年12月発表)に基づくデータ」
※2 「Weber DJ 2nd、Koroluk LD、Phillips Cなど カスタムと従来のプリアジャストされたブラケットシステムの臨床効果と効率の比較J Clin Orthod 2013; 47(4):261-266によるデータ」
MFT(口腔筋機能療法) MFT
お口まわりの筋力トレーニング MFT(口腔筋機能療法)とは
当院では、不揃いな歯並びを根本から改善するため、MFT(口腔筋機能療法)に力を入れています。
MFTとは、口腔機能を高めるために舌や唇、頬といったお口周りの筋肉を強化するトレーニングです。MFTによって歯並びを悪くする原因でもある舌の癖や、口呼吸などの習慣を改善します。このほか、口腔周囲筋の筋力を鍛えるトレーニングにより、歯や顎、顔などの正常な発育を促すこともあります。
矯正治療をして歯並びをきれいにしても、舌の癖などによって後戻りする可能性があります。長期安定させるために、MFTは必要なトレーニングといえます。
舌癖自己診断
無意識に動いてしまうような癖は、ご自身ではなかなか気づきにくいものです。舌や唇の動きをしっかり把握している方は少ないのではないでしょうか。
下記の舌癖のチェック項目をご覧になり、ご自身に当てはまる癖はないか参考になさってください。
舌癖チェック項目
- 1歯と歯の間から舌が出ている、あるいは舌で下の前歯を押している
- 2舌の脇に歯型のようなへこみがある
- 3唇を閉じて鼻だけで呼吸をすると苦しくなる
- 4いつも口が開いている(お口ポカン)
- 5口を閉じると筋肉が緊張し、オトガイ(下顎の先)にしわができる
- 6口を閉じたとき『への字』になる
- 7水を飲むときに歯と歯の間から舌が出てきて、コップを迎えにいく
- 8水を飲むときに前歯で舌を噛む
- 9水を飲むとき唇に力が入る
- 10サ行やタ行(英会話の“th”)を発音するときに歯と歯の間から舌が出る
判定結果
- 1~2低舌位
- 3耳鼻科の受診をすすめる
- 4~6口唇が弱い
- 7~9異常嚥下癖がある
- 10発音に問題がある
MFT(口腔筋機能療法)の目的
不正咬合は生まれつきでしょうか?
不正咬合の多くが、口周りの筋肉の弱さやバランスの悪さ、舌の位置の悪さ、舌癖などに原因があると考えられています。
装置を使った矯正治療をしなくても、MFTを受けるだけで歯並びがある程度改善することもあります。また、矯正装置を装着する場合でも、理想的な位置に歯を動かすためにMFTを併用するケースもたくさんあります。
MFTの目的は患者さまの状態により異なりますが、舌を上顎についた状態にする、口を楽に閉じられる、正しく飲み込める、発音や発声をできるようにする、といったことが挙げられます。
口腔機能の悪習癖も不正咬合の要因です
歯並びの成長を阻害する悪習癖には、次のようなものがあります。このような癖を改善することも、MFTの目的です。
口呼吸
不正咬合と顔面成長を悪化させる可能性が大いにあります。
口で呼吸をすると病原菌が粘膜から直接取り込まれるため、健康上の問題も発生します。
舌癖
常に舌が歯に触れていたり押しつけていたりすると、舌癖とよばれる状態になります。
舌先の正常な位置は、上の前歯の付け根の少し手前となります。
舌の位置が悪いと、たとえ小さな力でも歯並びが崩れてしまうおそれがあります。
舌突出癖
授乳をしている赤ちゃんは、吸引するように飲み込みます(乳児型嚥下)。歯が生えてきて食事ができるようになると、噛んだものを口の中で集めて飲み込むようになります(成熟型嚥下)。
しかし、お子さまによっては成熟型嚥下にうまく移行できないケースもあります。そうすると、舌を前に出す舌突出癖が出ることがあります。飲み込むときにこのような癖があると、頬や唇に強い力が加わって歯並びの崩れにつながります。
MFT(口腔筋機能療法)の流れ
1ビデオ撮影
笑っているところやリンゴを食べている様子などをビデオで撮影します。歯や舌の使い方、食べ方、お口周りの筋肉の動き、姿勢などを見て、筋肉の弱いところを確認します。
2MFT検査
トレーニングを始める前に、お口周りに関する検査をします。舌の厚みや長さなどを測定するほか、舌の状態の確認、口唇閉鎖力測定器での口唇圧のチェックなど、さまざまな検査をします。
3トレーニング開始
患者さまの状態や検査結果などをもとに計画を立て、トレーニングを開始します。大人の場合は、矯正装置を作っている間にスタートします。お子さまは矯正装置に慣れたころにトレーニングを始めます。
4トレーニングの継続
矯正治療で通院する際、毎回MFTをします。間隔としては月1回程度になります。通院時だけでなく自宅でもトレーニングを継続していただき、舌悪癖などを改善していきます。
外科的矯正 Surgical
外科的矯正とは
矯正治療のほかに、顎の骨の手術を併用する治療を外科的矯正といいます。顎の骨の変形や上下の顎骨の不調和が大きい状態だと、矯正治療だけでは改善するのが難しくなります。そこで、顎の骨を手術して噛み合わせの土台を整え、噛み合わせを良くします。
『顎変形症』の場合、外科的矯正を適用します。顎変形症の治療は基本的に保険診療となるため、治療の価格が矯正治療よりも低くなります。手術の方法は、下顎だけの手術、上下両方の手術、部分的な手術など、症状によってさまざまなものがあります。
お口の中を手術するので、顔に傷あとは残りません。手術は当院ではなく、連携している医療機関で行ないます。
なお、顎変形症で外科処置を必要とする場合の矯正治療に保険が適用されるのは、『顎口腔機能診断施設』で治療を受ける場合に限られます。当院も該当施設ですので、保険適用で顎変形症の治療を受けられます。
外科的矯正のメリット
- 歯並びの土台となる顎骨を手術するので、噛み合わせを根本から改善できる
- ほとんどのケースで保険診療となるため、価格が低くなる
- 顔立ちをある程度整えられる
外科的矯正のデメリット
- 手術をするため、およそ2週間入院しなければならない
- 全身麻酔をするので健康へのリスクがある
- 手術後に神経の麻痺や痺れが見られる(ほとんどの場合は消失します)
- 手術が終わった後、顔が大きく腫れる(腫れは数週間でひきます)
- 手術から数週間は通常の食事がとれず、流動食になる
外科的矯正の基本的な治療の流れ
1術前矯正治療
手術をする前に上下の歯列を矯正治療します。症状によりますが、通院していただく間隔はおよそ1ヵ月に1回、治療期間は1~2年になります。
また、入院前の検査などを受けていただくこともあります。
2手術
提携している医療機関に入院し、顎の骨を手術します。入院期間はおよそ2週間になります。
3術後矯正治療
手術が終わった後は、顎の骨が回復するまで開口の練習をしたり、矯正治療をして噛み合わせを調整したりします。通院していただく間隔はおよそ1ヵ月に1回で、半年ほど続けていただきます。
4保定・メンテナンス
動かした歯がもとの位置に戻らないよう、装置で保定します。保定が完了して噛み合わせが安定してきたら、虫歯や歯周病などを予防するために2ヵ月~半年に1回の頻度でメンテナンスを受けていただきます。
・機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
・最初は矯正装置による不快感、痛みなどがあります。数日から1~2週間で慣れることが多いです。
・治療期間は症例により異なりますが、成人矯正や永久歯がすべて生え揃っている場合は、一般的に1年半~3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行なう第1期治療で1~2年、永久歯がすべて生え揃った後に行なう第2期治療で1~2年半を要することがあります。
・歯の動き方には個人差があるため、治療期間が予想より長期化することがあります。
・装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、矯正治療では患者さまのご協力がたいへん重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
・治療中は、装置がついているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯が動くことで見えなかったむし歯が見えるようになることもあります。
・歯を動かすことにより歯根が吸収され、短くなることがあります。また、歯肉が痩せて下がることがあります。
・ごくまれに、歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
・ごくまれに、歯を動かすことで神経に障害を与え、神経が壊死することがあります。
・治療中に金属などのアレルギー症状が出ることがあります。
・治療中に、「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口をあけにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
・問題が生じた場合、当初の治療計画を変更することがあります。
・歯の形状の修正や、噛み合わせの微調整を行なうことがあります。
・矯正装置を誤飲する可能性があります。
・装置を外すときに、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、補綴物(被せ物など)の一部が破損することがあります。
・装置を外した後、保定装置を指示どおりに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
・装置を外した後、現在の噛み合わせに合わせて補綴物(被せ物など)の作製やむし歯治療などをやり直す可能性があります。
・顎の成長発育により、噛み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
・治療後に親知らずが生えて、歯列に凹凸が生じる可能性があります。
・加齢や歯周病などにより歯を支える骨が痩せると、歯並びや噛み合わせが変化することがあります。その場合、再治療が必要になることがあります。
・矯正治療は、一度始めると元の状態に戻すことが難しくなります。
・保険診療が適用されるのは、指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)または顎口腔機能診断施設の指定を受けた医療機関のみとなります。
・手術は全身麻酔のもとで行ないます。
・2~3週間程度の入院が必要となり、入院前には検査のために通院していただきます。
・手術後は部分的な麻痺やしびれが出たり、まれに鼻の変形が見られることがあります。
・骨を固定するために頬側からビスを入れてプレートを留める場合、数ミリの切開が必要となることがあります。ただし、ほとんどわからない程度の小さな傷です。
・手術後しばらくは口があまり開かないので、食生活に不都合を感じることがあります。
・手術後半年から1年くらいで、プレート除去手術のため再度1週間程度の入院が必要となることがあります。